Google Apps
概要 †
Google Appsとは、Google社が提供するメールやスケジュール管理、ドキュメント作成機能やデータ共有、簡易Webサイトやイントラサイトの作成機能GoogleサイトなどをWebから利用可能なツール群を指す。
安価なツールとは思えないGmailの機能や迷惑メールのフィルタリング、スケジュール管理機能との同期などが月額600円(公式価格)または年額6000円で利用可能という価格面のアドバンテージによって、採用した企業は500万社以上と言われる。
メリット・デメリット †
メリット †
- なんといっても、安い
企業向けのものでも年額6000円。
自前でサーバを立てて、データセンタ費用を支払い、電気代も支払い、各PCにMicrosoft Officeのライセンスを購入のうえインストールする。
他の手段では一人あたりの費用は間違いなく年額6000円では収まらない。 - 独自ドメインが利用可能
企業ユースが伸びた原因は、実はこれなのではないかと考えている。
与えられたお仕着せのドメインだけでなく、自身のものが利用可能であり、既存ドメインからの移行も実施できるとあれば、乗り換えたレンタルサーバ組は多いかと思う。 - ヘルプデスクの窓口受付やサポートフォーラムが充実している
オンラインでの問い合わせが可能なほか、フォーラムを通して投稿された世界中の利用ユーザの問い合わせ・質疑応答が照会できる。
似たようなことで悩む人は世界中にいるもので、答えを見つけられることも多いし、こちらの疑問に答えてくれる人もまた多い。 - サーバメンテをせずに済む
自前のサーバを持った場合、サーバ代・OSやDBのライセンス費用・ベンダへの保守費用などは避けて通れない。
仮に自社のシステム担当が行っている場合にも、監視業務・パッチ適用・OSの定期的なアップグレードが必要となるが、クラウドソリューションであるGoogle Appsではそういったものは不要となる。 - ブラウザを経由することで、OSや端末を選ばずにアクセスが可能
クラウドなので当たり前といえば当たり前なのだが、Google Appsがもたらすメリットの多くは管理者向けであり、エンドユーザにとっては数少ない、そして多大なるメリットがこれ。
モバイルデバイスとの連携もスムーズであるため、朝タブレットで予定を確認し、出社したらPCでメールを処理。長引いた打ち合わせ中にスマホが次の予定を通知してくれる。今となっては当たり前の光景だが、たった数年前では考えられなかった。 - 設定が簡単、ユーザ側でいろいろ設定が可能
PCにもモバイルデバイスにも、利用するための設定が非常に簡単というのは大きい。
エンドユーザレベルでも充分可能なほど。
また、エンドユーザ側で様々な設定が可能という点も大きなメリット。裏を返せばアンコントローラブルな部分もあるのだが、管理側にとっても「方法だけ教えて、各自で設定してもらう」といったことも可能。
デメリット †
- データ管理の軸足が変わる
そもそも、クラウドソリューションが一般的になる前は「ローカルをメインに、必要に応じて共有ストレージに保存する」という意識がマジョリティだったかと思う。
しかし、Google Appsをはじめとした各種クラウドでは「基本的には共有ストレージに格納し、必要に応じてローカルに」という意識改革をしなければならない。 - 性能要件が担保されていない
Google Appsは99%以上の稼働率を保証しているが、性能が担保されない。
(ちなみに、これは殆どのクラウドサービスに該当する)
具体的には、殆どのユーザは「メールは、送信ボタンを押した直後、直ちに相手に届く」と認識している。遅延があっても数分が許容範囲と言ったところか。
しかし、Gmailではよく遅延が起きる。十数分はザラ、見聞きした中で一番酷かったのは5時間。
もちろん常に発生するということではないが、「今メールで送ったんですけども」といって電話することも多い中、これは大きなマイナスポイント。 - エンドユーザにメリットがない
語弊があるかもしれないが、敢えてこう書かせて頂く。
採用のメリットで挙げたものの殆どは管理者やIT部門が享受するメリットであり、エンドユーザにとっては必ずしも良い面ばかりではない。
特に、はっきり言えばこの一点に集約できるかと思うが、「ユーザにとって、使い慣れたMicrosoft Officeを捨てるメリットや理由がない」のだ。
この一点について納得してもらうことは容易ではなく、上っ面の綺麗事を並べるくらいならば、コスト削減が理由の置き換えだと言ってしまった方が余程良いかと思う。 - IT部門にナレッジがない
エンドユーザが困ったときに頼る先は、当然ながらIT部門。
しかし、IT部門自体が使い慣れていないケースも少なくなく、問題解決やアドバイスを求められても回答が提示できないという例もしばしば。
また、多くのクラウドソリューションは、サードパーティ製のものも含めてサブ製品・サブサービスとも呼べる関連アプリをリリースしており、これらの用法が時としてIT部門の思惑を超えることがある。当然ながら、制御不能に。
こういったことに関連する調査・調整については「見えないコスト」であり、単純に価格だけで判断できない部分がある。 - トラブルが発生した際、IT部門ではコントロールできない
接続不良等のトラブルが発生した際、自社のサーバならばどうにかすることはできてもクラウドであるためIT部門にはどうしようもない。ユーザはIT部門にクレームするにもかかわらず、だ。 - 移動中の利用が不便
筆者はローカルにインストールしたExcel、Word、Power Point、Outlookに敵うものはないと考えており、Googleはオフライン用のツールも出しているのだが、使い勝手や操作感およびトラブルの発生率が段違いかと思う。
営業担当やエグゼクティブなどにとっては、新幹線や飛行機などの移動中は大事な仕事時間であり、ユーザ数としては多くないかもしれないが、こういった層が最も利益貢献するわけで、彼らにビジネスバリューを届けることはITの命題だ。 - プライバシーが保護されない
こちらの記事では、Gmailユーザのプライバシーが保護されないことが話題になっている。
Googleドライブなどもそうなのだが、利用規約でGoogle社が我々のデータを好き放題できることが謳われており、利用規約に同意した以上、これを受け入れなければならない。
もちろんGoogle社は我々のデータを覗き見する程ヒマではないとは思うが、そういったことを謳うサービスを敢えて使うこともないのでは、とも思う。
アプリケーション †
- Gmail for Business
1アカウント25GBの大容量。
また本業だけあって検索が非常に速いこと、高精度な迷惑メールのフィルタリングがウリ。 - Googleカレンダー
社内でのスケジュール共有だけでなく、取引先やプロジェクトチームなどとも同様に共有することができる。
Gmailと統合して招待状を送信したり出欠を管理したり、モバイルデバイス側に予定を通知したりとかなりの活躍を見せる。 - Googleドキュメント
Microsoft Office形式のファイルを取り扱うことができ、アップロードもダウンロードも可能となっている。
他に編集者や閲覧者がいれば共有することも共同編集することもでき、変更履歴の確認もできる。チャットやコメントも良い。 - Googleドライブ
オンラインストレージ。容量はメール容量と同じ。
OSや端末を選ばずデータ共有を行うことができ、小口の組織やプロジェクトごとのデータ管理ならば、これで充分かもしれない。 - Googleサイト
ガイダンスに従っていけば、Webサイト構築の知見がなくともWebサイトを作成することができる、という機能。
チーム用、プロジェクト用、特定ユーザ用などで作ってみるのもよいだろう。
それぞれごとに、閲覧を許可するユーザの指定もできる。 - Google Apps Vault
最近リリースされた監査用の追加サービスらしい。600円/ユーザとのこと。
アーカイブは非常に重要で、悪意を持った退職者がデータの破壊や削除を行うケースは残念ながら珍しくないし、情報漏洩事件や訴訟に発展する事件が発生した際、PCにダウンロード済みのデータには証拠能力が疑われるケースもあるとのことで、そういったケースへの備えとして検討しても良いだろう。
他ソリューションとの比較 †
トピック | Google Apps | Microsoft Office&レンタルサーバ | Microsoft Office&Exchange | Microsoft Office365 |
価格 | 年6000円=月500/1ユーザ | Officeは4〜6万/ライセンス。レンタルサーバは規模によって1万〜10万(大抵はユーザ無制限) | Officeは4〜6万/ライセンス。サーバOSとCALは別途発生 | 月480〜1980/ユーザ |
定期アップグレード | 不要 | サーバは不要。Officeライセンスは別途必要。 | 必要。Officeライセンスは別途必要。 | 不要 |
メールやスケジュールなどの情報の統合 | 可能 | 可能だが、殆ど要開発 | 可能 | 可能 |
データの共有 | Googleドライブで可能 | FTPなどでは可能だが、基本的には別途構築 | Share Pointを構築することはできる、基本的にはファイルサーバ運用 | Share Point Onlineで可能 |
拡張性 | 殆どない | ある程度可能だが、レンタルなので制約もある | 金さえ掛ければいくらでも | 不明。然程でもないと予測 |
最も大きな評価要素はコストで、Google Apps + ローカル用のOpen Officeで足回りを固めれば、イニシャルもランニングもぐっと低く抑えることができる。
しかしながら、データの互換性が謳われているといっても取引先は殆どMicrosoft Officeを使用しているであろうこと、ネットに接続していない時のことを考えれば完全にGoogle Apps一本にシフトするには不安があるのが現状。
それに、「安いだけで不便」という評価が広まってしまえば、エグゼクティブ達もユーザの一部であることから黙っておらず、彼らの鶴の一声だけで運用が変わってしまい得る。
そのため、Microsoft Officeは別途用意してメールとカレンダーおよびドキュメント共有のみと割り切るか、いっそのことMicrosoft Officeのクラウド版であるMicrosoft Office365を採用するか、しばらくは様子見で人柱が増えるのを待つか。
クラウドサービスだけを利用するとしてしまえばコスト面では多大なメリットがあるが、中途半端な使い方をしてしまうと「クラウドの機動性が犠牲になり、ハンドメイドの拡張性も失われる」という最悪の結果にもなりうるため、よく吟味されたし。
なお、Office365とGoogle Appsの違いについては、こちらのサイトやNAVERまとめなどにまとめられているので参考までに。
そもそも、何のために導入するかを明確にすること †
Google Appsを導入するにあたって、まず決めるべきなのは、どのような位置付けで利用するのかということで、Google Appsは豊富な機能を提供しているが、如何にして使用するか、これを明確にしなければならない。
- 自前のメールサーバを持たない、というだけ=メーラーとしてだけ使う(Gmailだけ)
- 社内で情報共有をしたい=ポータルとしても使う(GoogleサイトやGoogleカレンダー)
- ExcelやWordのファイルを共有したい=ドキュメントの共有にも使う(Googleドライブ)
確かに、「とりあえず入れてみよう」で課題はそこから炙りだせばよい、というアプローチもあるが、権限設定絡みは、誤ってWebユーザへ一般公開してしまうことを含め「例え一度でも、見られるべきでない人に見られるべきでない情報が見られてしまってはならない」という性質を持つ。
そのため、Googleドライブの利用に関してはファイルサーバとGoogleドライブの住み分け、どのように権限設定を行うかなどを含めて事前に「どこまでできるか」と「どこまでやるか」を考慮しておかなければならない。
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