財務会計/手形
視覚や権利を証明し、金銭の支払や受取を保証する証書のひとつ。
時代劇に出てくる通行手形や切符手形(いわゆる切手)および為替手形(為手、ためて)などもあるが、ここでは約束手形(約手、やくて)について触れることとする。
英語ではa promissory note、単にa noteとも表現されるようだ。
概要 †
簡単に言えば、振出人は支払期日に額面金額が引き落とされ、受取人は被裏書人欄に取引銀行名を記載の上で期日前に提出し*1、額面金額を受領する。
手形は、印紙税がかかったり、物理的に手渡ししなければならなかったりするため全盛期の10分の1程度の取引総額にまで落ち込み送金に取って代わられていっているが、それでも年間400兆円以上の規模でやりとりされている。
これは、後述のリスクがあるものの暫く先の振込みとなる送金と違い、裏書や割引による早期の資金化が可能というメリットが決して小さくないという証左と呼べる。
前提 †
種類としては約束手形と為替手形があり、前者は振出人と受取人の二者間、後者は振出人の債務者・振出人・振出人の債権者の三者間でのやりとりのこと。
後者はあまりないので、ここでは前者の約束手形について語ることとする。
小切手と違い †
- 裏書(譲渡)するケースがある。詳細は後述するが、裏に書くから裏書と呼ぶ。
- 額面が100,000を超過すると収入印紙が必要。*2
- 支払額は、支払期日までに用意しておけばok。小切手は銀行に持ち込みがあった時点がベースで、どの銀行支店に持ち込んだかによってリードタイムが異なる。つまり受取人がいつ持ち込むかに依存する。
呼称について †
使用目的や形態によって、下記の呼び名がついている。
手形自体の種類が異なるわけではないが、用途や状態に各々名前がある。
白地手形 †
しらじ、と読む。
振出日・受取人・支払期日・金額に記載のない手形 = 受取人が書き込む手形のこと。
期日や金額をブランクで出すなんて有り得ないが、振出日がブランクの場合はどのようなサイトかがバレなかったり、受取人がブランクの場合は裏書なしの譲渡、つまり名前を出さずに済んだり手形取引上のリスクを背負わずに済むといった側面がある。
支払手形 †
債務の対価として振り出す手形のこと。
英語ではnotes payable。
受取手形 †
債権の対価として受け取った手形のこと。
英語ではnotes receivable。
割引手形 †
期日の前に手数料を支払って受け取る手形のこと。後述。
裏書手形 †
譲渡履歴のある手形のこと。後述。
不渡手形 †
期日に額面金額を引き落とせなかった手形のこと。
融通手形 †
資金の提供を受ける形の手形のこと。ちなみに手形にはどこにも融通なんて書いていない。
商いの結果、つまり債権/債務の対価でないため不渡になる可能性が高いと言われる。
貸付手形(てがし) †
手形を銀行に対して振り出し、融資を受ける場合の手形のこと。
銀行にとっては裏書が可能で不渡でも訴訟ができ、振出人にとっては金を借りる場合より印紙代が安いというメリットがあるが、一般的には証書貸付より短期で高利率のようだ。
電子手形 †
2009年11月から開始されたもので、紙の形を取らない事で紛失や盗難はたまた偽造といったリスク、印紙代や直接渡す手間を無くすことができる。
定期割引・分割割引といった新たな機能もあるようだ。
ちなみに、電子データに「裏」はないので裏書という言葉は使わず、単に譲渡と呼ぶらしい。
これを利用するには、説明会の受講と取引銀行との契約が必要になり、当然PCから操作するため、情報弱者はFAX。
裏書とは †
簡単に言えば譲渡することで、第三者への債務返済に充てるケースとなるが、いくつかの縛りがある。
- 手形に「裏書禁止」と記載されていないこと
- 譲渡履歴が、当初受取人から正しい日付順に記載されていること
- 裏書した人間は譲渡した後も一定の責任を持ち続けることとなり、具体的には手形が不渡になった場合に最終所持者から手形金額・諸費用・金利などを請求され得るリスクを持つ。*3
割引とは †
裏書はパスだが、割引とは銀行に買い取ってもらうことで、銀行に対する裏書という形式をとり、手形の目的欄に「取立(委任)のため」と記載して提出する。
額面金額から手数料および支払期日までの金利分 = 銀行の取り分を差っ引かれることとなる。
これには手形取引契約の締結が必要かつ担保への抵当権設定が求められ、また振出人に対する与信チェックもある。*4
また、手形割引業者に買い取ってもらうケースもあり、こちらは担保が求められたり信用枠のチェックが銀行よりは緩いものの、手数料は高くつく。
コメントはありません。 Comments/財務会計/手形?